realsound から「二人セゾン」はなぜ総合芸術か評価!!
「二人セゾン」はなぜ総合芸術か
「二人セゾン」。
まずこのタイトルの違和感と妙な口当たりの良さ。
そして当てられたメロディの切なさ。
楽曲的には、美しいピアノとストリングスに彩られた寒空広がる秋曲で、1stと2ndに比べればアコースティックギターの力強さはだいぶ抑えられている。今回フックになっているのは、何度も繰り返される「二人セゾン」というタイトルにも冠されたワードだ。AKB48「大声ダイヤモンド」「涙サプライズ」や、乃木坂46「太陽ノック」「ロマンティックいか焼き」など、一見関わりのない単語をくっつけてフックのある言葉を生み出すのは秋元康が昔から得意にしている手法だ。ちなみに「セゾン」はフランス語で「季節」のこと。
これまでにリリースされ話題となった1stシングル「サイレントマジョリティー」、2ndシングル「世界には愛しかない」では、欅坂46には「大人への反抗」というイメージがついているように思う。それからすると、今回の「二人セゾン」はその直系の流れにはないといえるだろう。どちらかと言えば、スチームパンク・グランジ調の「大人は信じてくれない」が、従来の路線をより過激にしたものといえる。だが表題曲に「二人セゾン」を選んだことは、彼女たちが戦いをやめたことを示しているわけではない。
そのヒントといえるのが、発売に先立って公開された同曲のMVにある。
映像内では、メンバーは学生服を着ているが、その中には一度も学校や家庭(=大人と戦う戦場)という場所は出てこない。カバンを放り投げ、満面の笑みで自由に舞う彼女たちは、戦場から離れひと時の自由に心を躍らせている。「二人セゾン」で描かれているのは、大人への強い思いをぶつける彼女たちにも、他の誰とも変わらず「変わり過ぎていく時間(=季節)」があることだ。MVで見られる彼女たちの姿は本当に美しい。その笑顔も、可憐に舞う姿も。だがこの美しさすら永遠ではないわけで、卒業したり年老いたり、時間が経つことでそれらも移ろっていく。このメンバーたちの刹那的な美しくさと儚さが、演出、振り付け、ライティング、カメラワークでより引き立てられ、このMVは美しく仕上がっているのだ。
AKB48「ハイテンション」、乃木坂46「サヨナラの意味」といったそれぞれの最新曲に対してCDセールスでは大きな差があるものの、MVの再生回数では両者に勝り970万回以上の再生を記録しているのは、それだけこのMVが魅力的だということに他ならないのではないだろうか(2017年1月18日現在)。realsound